思い出-5
 
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いつか、こんなレイアウトを…(笑)

 趣味の再開以来、私の作るレイアウトやモジュールは「光山市という架空の地方都市のどこか」を切り取った風景作りが中心となっていますが、そうした都市志向、ビル街志向のきっかけとなっているレイアウトがあります。

 TMS誌の78年の10月号に掲載されている「本邦鉄道」。
 学生時代にこの記事を始めて見た時の衝撃は未だに忘れられません。
 それまで見てきた「鉄道模型のレイアウト」はその99パーセントまでがローカル風景のモデル化(その傾向は基本的に今でも変わっていない気がします)ばかりで田舎物の私ですらやや食傷気味だった時期、TMSの表紙に掲載された3重複線の高架を疾走する103系と20系のコラボレーションは衝撃以外の何者でもありませんでした。
 しかも背景は堂々たるビル街。日本型Nゲージの市販建造物も碌になかった当時、どこから見ても「日本のビル街」に見えるシーナリィはこれまた衝撃的でした。

 わくわくしながらページを繰ると表紙の写真を更に上回る衝撃。複々線の高架と併進する高速道路と川、それらを囲むように立ち並ぶビル街のダイナミックな構図は正に大レイアウトの風格たっぷりでした。

 余談ですが、このレイアウト以降、専門誌上にも都市風のレイアウトはいくつか出ていますし、市販建造物でもビル街の一つや二つ作れるくらいの種類が出てきています。
 ですが、それらの大半はヴィネット風に「ビル街の一部を切り抜いた」印象が強い物ばかりでこのレイアウトの様に「都市のパノラマ感を凝縮する」方向で作られた物には未だにお目にかかっていない気がします。Nゲージとしては大型に属するレイアウトですが、それでも畳2畳を越えないスペースで(実はビル街の他に近郊団地や山と海岸線のセクションまであります)ここまで要領よく風景を纏めたものは空前絶後と言って良いのではないでしょうか。

 むさぼり読むうちにこれこそが自分の作りたいレイアウトの要素である事を確信し、いつの日かこういうレイアウトを作りたいと思った物です。

 今のレイアウトや現在改修中のモジュールでもビル街はあるのですが、とてもこのスケール感、パノラミック感は出せていません(そもそもスペースが無い)
 それでもいつかはと思わせる私の目標の一つであります。


 海外のレイアウトで最初に個人的にインパクトを感じた作品はこの趣味を始めてすぐ位の時期にTMS誌上で出会ったヘルマンザイレ氏のHOレイアウトでした。
 これは76年の3月号と9月号で2回にわたって分載されたものでしたが、専用のレイアウトルームに半島型の大レイアウトが組まれ、その風景創生のスケールには圧倒された覚えがあります。

 特に影響を受けたのは9月号の「駅前広場」の記事でした。
 ここでは西独逸の地方都市の駅前広場とその周辺部をモデル化したものでしたが、限られたスペースを効率的に使い実にリアルな駅前風景を再現している所にインパクトを感じたものです。

 その記事の中で作者が語っていたのですが「駅前広場の規模はその都市の規模に比例するものであり、限られたスペースで都市のスケール感を再現する場合はほかの建物の面積を削っても駅前広場のスペースを削ってはならないというのが私の考えである」といった意味の一節がありました。

 この一言は私にとって都市型レイアウトを志向させる中で大切な一語でした。
 それまで各誌で目にしていたレイアウトではローカル風景中心と言う事もあるのですが一般に駅前広場が貧相な物が多く、レイアウトの視覚的なスケール感までも失っているケースが非常に多かっただけに一言一言が身に染みいる思いでした。
 これは同時に駅と鉄道施設偏重になりがちな日本のレイアウトに対してレイアウトでは本来「線路のある風景」の創生に不可欠な一般の建造物や地形の占めるウェイトが大きい事をも示していたといえます。
 これは決して作者の言葉だけではなく実際に製作されたレイアウトそのものもそのポリシーに基づいてきちんと風景を再現していた点でも素晴らしいものでした。

 この「駅前広場」のシーナリィは今でも私の理想のレイアウト像のひとつとなって焼き付けられています。

 この前後の時期のTMSでは同じく西独逸のロルフ・エルツマー氏の手になるレパ・バーンという大規模な駅を構築したレイアウトが話題の中心だったのですが、私の印象では線路ばかりで風景としては却って味気ない印象が強く私の志向とは少々ずれを感じたものです。
 やはり大規模な駅を造るからにはそれに見合う規模の町が再現されていないと面白くないと思えたものですし、その印象は今も変わっていません。

 先の「本邦鉄道」と併せて鉄道模型の趣味を始めた頃の1・2年の間に自分のレイアウトの志向を決定させる記事に集中して出会えたという事は私にとってもラッキーな事だったと思えます。

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