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レイアウトと遠近法で思うこと
 1
 題材が題材ですので大レイアウトに絡む考察です。
 特撮博物館で私の目を引いたのは「強遠近法」と呼ばれるテクニックの実例でした。


元々はステージの奥行きのなさをカバーするための技法として使われている物ですがここでは高速道路とその周辺のセットで説明していました。
手前側のミニチュアを大きく、奥に行くほど小さく作りこむ事で実際以上の奥行きを感じさせるものです。
 
 実はこのテクニックはJOHN ALLENのGD LINEをはじめ海外の大レイアウトではよく使われる手法です。
 但しレイアウトと異なる点として道路のミニチュアで「無段階で徐々にミニチュアを小さくしていくように作り込んでいる事が異なります。
 

 実際カメラの眼をごまかすのが本来の目的ですから手法としては良いのですが、ジオラマでこれをやると視点が上がるとすぐぼろが出てしまうという問題があります。
 似た様な手法は「巨神兵〜」でのミニチュアセットでも使われており会場で販売されていたクリアファイルで確認する事が出来ます(道路が奥に行くほど狭くなっている)

 レイアウトで一般によく目にする(?)のは手前にHO、奥にNといったように平行する風景の組み合わせで奥行きを出すやり方で昔のセルアニメの「マルチプレーン撮影」のそれに近い感覚です。
 (最近のアニメではCGの普及に伴い手前から奥への「縦の動き」で奥行きを出す方法が増えてはいますが)

実を言いますと今回特撮博物館で実物を見るまではこの手法をレイアウトに使う事は私自身批判的に捉えていました。

 視点が動きやすく上記のミニチュアの問題がもろにばれてしまうジオラマでは却って子供だましに見えてしまうのではないかと言うのがその理由です。
 ところが今回の展示を見て感じたのですが、実際に視点をずらしてもあまりそれが気にならなかったのです。


 ここでの視点移動は専ら上下の方向でしたが視点を上げる〜エレベータの様に上にあがって行く構図ならばミニチュアセット自体の立体感の効果の方がパースの付いたミニチュアの不自然さを上回り非常にリアルに感じられたのです。
 
この場合でも前にのりだしてみれば結局はぼろは出てしまうのですが、特撮セットと同様にレイアウトの場合でも実際には運転中にのりだして覗く事が少ない事を考えれば大したデメリットとは思えません。

案外この手は上手く使えばレイアウトにフィードバックできるのではと思えました。

更に言うなら、視点の移動を一定の範囲にとどめる事が出来ればかなり有効な手法ではないかと思えたのです。

但し、実際に見学して感じましたがこれが効果を発揮するにはいくつか条件があると思います。
ひとつはトリックアートであるにしてもある程度の奥行きが確保されている事。
 もうひとつは下から見上げる事で効果が高まりやすい事を考えるとホリゾント(レイアウトで言う背景画)の高さがある程度は必要。
(これは実際に自分のレイアウトで試しています)
 更に近景と遠景の繋がりの自然さを確保するために予め見え方の比率を計算して置く事。

 他にもあるでしょうが大体はこんな所です。

2



いきなりのお恥ずかしい写真で恐縮です。



 数年前ですが写真の撮影で「レイアウト上で遠近感を強めることでリアリティを出せるのではないか」という仮説の元にいくつかの写真を実験的に撮ってみた事があります。

 遠景用にNスケールの建物や車両を置くのは当然ですが中景に64分の1スケールのトミカを、最も手前側に食玩のフィギュア(これは万●書店などで一体300円前後で買えます)を使っています。
 但し漫画チックなものや「萌え系」が多いので使えるものがなかなか見つかりません。それも基本的に顔の入らない後姿を使えばどうにかなるレベルです。

 これらを配置して比率に気をつけつつひとつの構図に収める実験でした。

 結果はごらんの通りですが比率に気をつければそこそこの効果は得られそうという結論に達しはしました。
 ただ、当時はそこで満足してしまった事と、基本的に写真撮影にしか使えない(視点を上げるとトリックがもろばれする)ことが分かった為に以後試しては来なかったのですが。

 今回の特撮博物館ではそれと同じ事をもっと大掛かりに、かつ繊細に実行している事が良く分かりました。

 このテクニックですが3D撮影で威力を発揮しうるのではないかと最近考え始めています。

3

前回はお恥ずかしい物をお見せしましたが、当時はHO(16番)やZゲージに手を出していなかったのでNスケールとトミカという中途半端な組み合わせにしかなりませんでした。
 あれからHOスケールや43分の1(国際的なミニカーの標準スケールです)のモデルも入ってきているので前回と同様遠近法の実験をやってみる事にしました。



 一番手前に43分の1のミニカー、中間に64分の1のトミカ、奥に80分の1のHO、最も奥に150分の1のNのモデルをそれぞれ配置しました。
 各々のモデルの位置ですが通常の遠近法にのっとりそれぞれのスケール比率が極力一致する様なセッティングで行なっています。
(ですから奥行きが変われば配置も変わります。奥行きがない場合は書割などを使わざるを得なくなるでしょう。いわゆる立版古と同じ要領です)

 特撮セットの様なラージスケールと潤沢な空間がないのでテーブル上での再現です(汗)

 単純な同一平面上での配列の場合、上から見下ろすアングルですとすぐぼろが出るのがわかります。
 モデルのスケールが小さい場合はこれは致命的で簡単に上から覗ける分「インチキ感」も強まってしまいます。
 これは奥行きがなければないほど顕著なようです。


 ではローアングルではどうか。
 これですとかなりリアリティと奥行き感のある見え方になるのが確認できました。
 できればジオラマの地面を目の高さまで持って行ければかなり楽しめます。


 この場合注意すべき点として、よほど奥行きがある場合を除いて奥にある建物類や構造物は高い方が有効の様です。
 一番奥にあるNスケールの建物に高さのあるビルを加えた場合に奥行き感が強まりました。
 奥にある建物が低いとベースを傾けない限り(これは特撮ミニチュアでは時々使われる技法です)奥の風景を見下ろすアングルになってしまいぼろが出やすくなるようです。

 今回は色気に欠ける内容ですのでおまけ。



 MODEMOの江ノ電を買ったときに調子に乗ってこんなものを作ったのを思い出しました(汗)

4


収穫だったのは(これは当然と言えば当然なのですが)手前にあるモデルの細密感が生かせるのもこの手法の利点です。
 路面電車の手前の同じ位置にHOスケールのミニカーと64分の1のトミカを配置して比較したのが上の写真です。

 これはより大きなスケールのモデルを組み合わせるとより大きな効果があると思えました。


 同じ要領をを「高架線を走る電車」に切り替えてみたのが上の写真です。

 ここでは静止させましたが、走行ペースの異なるHOの路面電車とNの電車を同時に走らせればかなりのライブ感が期待できそうです。
 (更に比率の小さいZゲージの新幹線辺りが最も奥に加われば結構面白くなりそうです)

 
 更に遠近感を強調しようと最も手前の食玩サイズのフィギュアも置いてみます。
 効果はそこそこありますがスケールの差がありすぎて特撮物の合成臭い感じになりました。

 但し奥行きがもっとあればこれも効果的に思います。
(それにしてもこの手のフィギュアは女の子ばっかりでこういう用途に使える「普通の格好をした男性キャラ」が少ないのには往生します)

 真上から見ればスケールの差は一目瞭然ですし、スケール上では同じ物が配置されるのが正しいのですが見た目の上では奥にある電車と手前のクルマの細密感が揃って見えるのがお分かりと思います。
 (元々HOスケールのミニカーはサイズが小さい分表現に限界がありますし、最近のTLV系のミニカーは大人のコレクターを想定した細密度の高い物が増えているのでこの場合はより効果的だったようです)

 ただ、ここまでやって見た感触を言うならこれらのテクニックは「大きいレイアウトを更に大きく見せる」という点ではかなり効果的ですが「小さいレイアウトを大きく見せる」には効果的なアングルが限定されやすいため、難しいのではないかという事です。
 時々専門誌でも見掛ける「額縁セクション」の様な使い方ならどうにか使えるのではないでしょうか。

 私個人としてはこの効果を現在企画中のHOセクションで使ってみようかと考えています。

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