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特撮博物館に思うこと
 2012年に東京近代美術館で開催された「特撮博物館」のはなしです。
 庵野秀明監修による「日本の特撮映画・TVをミニチュアと言う観点から俯瞰する」と言う私にとっては願ってもない好企画でしたからかねて何とか行きたいと思っていたものですが予想外に早く行く事ができた形です。

 展示品では前半ではウルトラマンやゴジラなどの撮影用の着ぐるみやメカのミニチュアが人気でしたが(個人的にはマイティジャック関係に燃えました)、後半に展示されていた普通の建物や車両・飛行機などのミニチュアは地方の企画展なんかだとまずお目に掛かれない物だけに非常に嬉しいものがありました。

 鉄道模型ファンにも分かるネタとしては「妖星ゴラス」にちらりと登場するEF16の一抱えもありそうなモデル、同じく「青島要塞爆撃命令」に登場するB6タイプの蒸機なんかが面白いと思います(他には「日本沈没」のクハ181「怪獣大戦争」のキハ82なんかがよく見ると見つかります。これらは余程の特撮ファン、鉄道模型ファンでも存在を知らないモデルも多いと思います)
 できたら「新幹線大爆破」の0系とか「地震列島」の営団2000系とかも見たかったですが無いものねだりはできません。

 東京タワーなども何本か(縮尺違いや折れ曲がった奴等)数本あったのですがそのうち一基は150分の1の正調NスケールなのでこれをNレイアウトに置いたらどうなるか等と想像してみるのも楽しいかと(ちなみに2メートル以上の高さなので普通の家だと床置きしただけで天井に届きそうになるはずです)

 そしてクライマックスは広間に設置されたミニチュアセットです。

 ここだけは撮影が許されているというので何枚か収めて来ましたが、まずこのカットにしびれます。
 手前のインテリアから窓の外の遠景に至るまで全てがミニチュアというワンダーランド状態。


 レイアウトビルダーやジオラマメーカーなら涎が出そうな大スペースをフルに使い(とはいえ、特撮映画と言う観点で言うとこれでもまだ狭いそうですが)奥行きたっぷりに展開するミニチュアワールド。

 いや、ひたすら圧倒され、ひたすら堪能したひとときでした。

 これらも使って撮られたイベント映画「巨神兵東京に現わる」も上映されていましたが、そのパワフルな迫力も去る事ながら建物はもとより人間や小犬に至るまでミニチュア処理で表現された芸の細かさはサンダーバード的な別乾坤を建立しておりました。

 一方でこのイベントではレイアウトやジオラマつくりに関連して色々と参考になる所もあれば考えさせられる所もありました。

まず、今回の特撮博物館に出かける前に少し危惧していたこと。
 撮影用のミニチュアを実際に見たらちゃちな感じを持ってしまうのではないかという点です。

 実際に過去故郷などでやっていた特撮種明かし関係のイベントでは「如何にもとって付けた様なビルと称する箱、住宅と称するダンボール細工みたいな家」なんかを見ることが多かったので漠然とですが不安を感じていました。

 ところが今回のは実際にセットの中に入ってみるとこれが全く気にならない、そればかりか映像以上の生々しさを感じるライブ感に驚かされたのです。

 自分自身レイアウトなんかで街並みを構築したりしてはいても今のN(実はHOも)ではサイズが小さすぎて俯瞰で疑似風景を眺める楽しみはあっても(とはいえ、ディスプレイのフレームから中に入れないCGよりははるかにライブ感はあるのですが)風景の中に入り込む楽しみは十分とは言えないのではと思います。
 ですが元々が人間の入る着ぐるみが暴れまわる事を前提に設計されている特撮スケールのミニチュアではそうした不満はほとんど感じませんでした。

 むしろ映像の方が「手に触れられそうな」ライブ感がない分損をしている(実際映像ではちゃちに見えても実際のミニチュアが意外に大型モデルだったのに驚かされたのも今回の見学の収穫の一つでした)


 そんな所から、特撮のミニチュアの今後の展開として映画・映像の表現技法としてばかりでなく、ミニチュア自体をライブ感あるショーとして使うのはどうかと思えてきています。

 こうした実例としてドイツのミニチュアワンダーランドやオランダのマドローダム、日本でなら東武ワールドスクェアなどがそれに該当しますが、映画の特撮セットの場合これらと異なる特徴として「場面に応じて設定を変える」ことを頻繁に行う関係上セット自体の組み換えが容易に行える点があると思います。極端な話、昨日は石油コンビナートだったのが今日は東京駅、明日は下町の住宅街と切り替えることができる訳です。
 ここにライブ的エンターテイメントとしてのミニチュアの生き残りの鍵があるのではないかと。

 鉄道模型のレイアウトでもこれに近い事を(例えばショッピングモールにモジュールレイアウトを持ち込んでの運転会など)やっているケースがありますがおおむね観客の反応は好いようです。
 ですがこれは「きしゃの模型が走っている」というだけでなく「それぞれに趣向を凝らした風景」との組み合わせがあって初めて好印象になっているのではないかと感じるのです。

 これが車両展示だけ、ジオラマ展示だけだったとしたらあれだけの誘引力があったかどうか。

 ミニチュア風景は決してそれ自体が主役にしゃしゃり出てくるという事は稀ですしそれをやったケースの殆どが「ショーケースの飾り物」の域から出られません。
 ですがレイアウトや特撮のミニチュアならばそれに組み合わせるべき「動く主役(それが列車かクリーチャーかという違いはありますが)」があって初めて100パーセント魅力を発揮できる点で共通なものがあると考えます。
 この点で最初からそれ自体のディスプレイを目的としているジオラマとは異なると思えます。
 
 上記の場合で言うなら「セットに入り込んでいる人間(客)」がそれに相当します。一種のガリバー気分の疑似体験というのは(当のガリバー旅行記が300年前の登場という事を考えても)時代を超えたライブ的な魅力があるのではないかと思えるのです。

 ところで「特撮博物館」の見学では手持ちのカムコーダで3Dの動画撮影も試していました。
 実は上記の考察は一部これを踏まえて思いついた話だったりもします。



 以前、Nゲージの運転会で3D撮影を試した際に絞りが深くなる事や意外にマクロに強い事を把握していたのでよりラージスケールなミニチュアでは3Dの効果が高いのではないかと思っていました。
 そこで今回の観覧でも3Dカムを持ち込んだのですがセットの風景が二種類しかないのでトータルで5分程度の短いものですがそれでも効果を確認するには十分な動画が撮れました。

 結論から言うと「強遠近法を使ったミニチュアでは3Dの効果は最大限に発揮される」という事です。
 逆にこのセットでは遠景のビル街がそれに相当するのですが「アトランダムに漫然と並べられた建物の羅列」では3Dの効果は減殺される」という事でもあります。


 一番3D効果を感じたのは上の構図です。
 室内から窓を通して遠方の町並みを眺めると言うシチュエーションでは3Dの効果を高める条件が全て揃っているため、ぞっとするほどのリアリティが出ます。
 面白いのはカメラを移動しながらセットの横に回りこむとあっさりと3D効果が激減することで、ミニチュアの配置や比率の計算が重要であることを痛感します。

 これらの画でも3D効果は非常に高く感じられました。
 これで中景(例えば交差点)に「画面を横切る」車の動くミニチュアでもあればとんでもないリアルさとなったのではないでしょうか。
 これなどは十分にレイアウトでも応用可能と思います。

 あと、これも以前触れましたが一定の範囲でカメラを真上に持っていく形で視点を上げても十分にリアリティと立体感を保てるのも発見でした。

 実際特撮のミニチュアをカメラやビデオに収めるだけでも得がたい体験なのにそれを3Dで出来た事は大きな収穫だったと思います。
 この他強遠近法でのミニチュア配置のノウハウなどでも参考になる事実が次々に発見されました。

 改めてここで得られたことをレイアウトにフィードバックさせたいと思います。

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