入門書・1
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廣済堂「鉄道模型入門」


昭和50年前後はいくつかの入門書が出ていましたが、今回もその一冊を取り上げます。
水野良太郎著「鉄道模型入門」。以前に触れたカラーブックス「鉄道模型」の少し後に出た本です。
水野良太郎といえばTMSの漫画で有名ですが、当時の私のイメージで多胡輝著カッパブックスの「頭の体操」の挿絵を描いている人でした。当時は「頭の体操」シリーズも読んでいたのでそれゆえに最初にTMSを読んだ時にこの人の漫画を初めて目にした時の驚きは一通りではなかった事を覚えています。
 
車両模型や外国型模型に対しても一家言持たれていた方でしたから既にモデルをやっている人が見てもうなずかされるところも多い内容でした。
いわゆる入門書と言うよりも鉄道模型のエッセイ的な性格が他の本よりも強く、そのせいで今でも読み物として十分に楽しめます。


漫画家の描いた鉄道模型の入門書を読むのはこれが初めてではなかったのですがそれでもほかの入門書に比べて挿絵のビジュアル面が充実しており特にレイアウトプランの構成はこの人ならではの楽しさが溢れていた様に思います。
それまでのレイアウトプラン集が線路主体の「以下に複雑な運転をさせるか」みたいなものが多かったのに対して本書のそれはいかにも漫画家らしく「風景を主体に線路配置をシンプルに」という流れを実際にイラストを交えてイメージングしている点に特徴があります。


更に本書の白眉はレイアウトの楽しみを理解してもらうために
車両を台の上においてみる(見上げるアングルで観察する)
       ↓
レールの周りに電柱を一本、草木を少し配置
       ↓
建物を配置してみる
        ↓
ミニカーを置いてみる
       ↓
マッチのラベルで作った看板を配置してみる(以下略)

などという流れでごく自然に車両模型に風景が付け加えられる魅力を絵解きしているところです。
実際この部分に触発されて同じような事をやってみながらレイアウトへの志向をかきたてられたものですし私と同じ経験をされた方も多かったのではないでしょうか。

ところで本書の巻末には鉄道模型の参考書や入門書の一覧が記されていたのですが、その最後に「専門誌購読だけのファンも増えてほしい」という一節がありました。
この一節のおかげ…という訳ではないのですが、20年にも及ぶ趣味の中断期間の時期、専門誌とカタログを読む事だけは継続していました。

実際、本を読んでいたおかげでモチベーションが極端に落ちる(完全に止めようと思わなかった)事がなかっただけでもこの時期は無駄ではなかった気がします。
その意味でも私にとって影響の大きい本だったといえます(笑)

本書は前述の通りNゲージの黎明期にリリースされているので日本型のストラクチャー、アクセサリーが殆どない事についての嘆きが随所に見られます。
今からするとそこが隔世の感を感じるところですが。

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