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Nゲージの原点・童友社のSLプラモ

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 昭和46年か47年頃と記憶しています。親類の機関士の16番模型に触れて「鉄道模型」の楽しみを知りつつあった私がある模型店の店頭で見つけたもの。
 それが童友社のNゲージプラモデルの列車とレールのセットでした。
 箱のサイズも結構大きくエンドレスにプラスしてポイントやクロスレールも付属、ある程度複雑な線路配置も可能なセットだったと記憶しています。
 車両の構成は機関車C10とワム80000、タム、ワム23000、トラ、トムフという組み合わせでこれまた「列車」をそこそこ楽しめるボリュームがありました。

 但し、どれもオールプラ製(レールや車輪を含めて)のキット形式で機関車の駆動も乾電池式。単3電池をワム8に内蔵して機関車を動かす形式でした。
 当時は私も小学校低学年の事とて貨車はどうにかできたものの機関車をきちんと走れる様に作る事ができず早々と挫折してしまいました。
 今ではどれもこれも現存していません。今思えば勿体無い話ではありました。

 ですが、この経験が意識、無意識を問わず後のNゲージ参入、鉄道模型趣味への前段階として果たした役割は大きかったと思えます。

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 そんな事を考えていた折の先日、かなり懐かしいアイテムを入手する機会を得ました。
 その童友社の「9ミリゲージ機関車セット」一式です。

 Nサイズの機関車と貨車のひと編成に線路のセットが一式付いて完成さえすればちょっとしたレイアウトが作れるという物でした。
 とはいえ「プラモデル」と言う性格上、列車は単3乾電池の駆動、レールもオールプラスティック製です。
 今にして思えば「鉄道模型」と「プラモデル」「オモチャ」のすべての性格を内包したNゲージ歴史上の一種のミッシングリンクとも言える存在だったといえます。


 私がこれを買ってもらったのは前述のように昭和46年頃、まだ小学校低学年くらいの頃でした。
 当時は既に親類の機関士が16番の車両工作をやっていたのを見ていましたし、まんがの「模型工作教室」でNゲージの存在は知っていたと言う程度のレベルです。
 そんな時期に「鉄道模型をものにした」気分を味わえそうなこのプラモはかなり魅力的に映ったものです。

 早速買ってもらって作ったのですがそこは小学生の悲しさ、貨車はどうにか作れたのですが肝心の機関車がかなり本格的な構造(この点は後に触れますが殆どKATO辺りの機関車と同等と言って良い位のものでした)だったためにまともに走る様に作れず、線路なととともに早々とジャンクされてしまった苦い思い出があります。
 貨車の一部は後に本格的にNゲージを始めた頃まで残っており、少ないながらも乏しいラインナップを埋めておりました。
 事によると実家の押し入れ辺りから今後出てくる可能性もあるにはあります(笑)

 そういう思い出のモデルでしたがKATOのキハユニ26から始まる本格的なNゲージ参入から中断と再開を経て現在の状態になるまで長らく存在自体を忘れていたものです。
 ところが最近このモデルの出物を見つけたのが運の尽き。
 まさかこんな製品が中古で買えるとは思いませんでした。

 物はパーツの欠落なども一部にあるもののかなりパーツの揃った状態であの頃の思い出を甦らせるのみならず現在の鉄道に組みこませる事も夢ではないと感じさせるものです。
 そればかりか今の目で見てもかなり大した製品であった事も再認識させられるものでした。

 そのシステム性の点では少なくとも当時の関水金属を凌駕しうる物でしたし、どうかするとかのSONYのマイクロトレーンとも比較できるかもしれないものかもしれません。

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 先ずは車両から。

 今回入手したのは私が持っていたC10ではなくそれより前にリリースされていたらしい「C58」のセットです。
 ラインナップにはこのほかC11のセットもあったそうですがこれは見た事がありません。


 そのC58ですが、写真をご覧頂ければお分かりのように「これのどこがC58!?」という形をしています。
 C10の方はまだ実車に近い形態だったのですが…
 一番の問題はテンダーが無くてコールバンカーが後部に付いた形状で、電池を後ろの貨車に積む構造なら多少プロポーションが変でも「電池搭載の炭水車」にした方が少しはテンダー機関車らしくなった気もします。

 車体はプラ製(プラモデルなので当り前か)の一体成型で車輪もプラ。
 おまけにデフレクターが欠落しているのでますますC58に見えません(笑)

 その一方で伝達機構とウェイトは金属(恐らくダイカスト)製。モータとつながるギアもかなり本格的で殆どNゲージの動力機構そのまんまと言った趣です。
 ここだけ見ると到底「プラモデル」とは思えない本格的な駆動系です。

 尤もロッドだけは一枚板の金属製で玩具丸出しですが、これとてレールに載せて転がせばきちんと連動します。

 但し、それだけに車輪の工作にはかなりの精度が要求され(ここで引っかかるとまともに転がらない)子供の工作のレベルではかなりきつい物があります。
 これは私自身の経験、およびこの個体を手に取ってみて実感する所です(大汗)

 このモデルの前のオーナーはかなり良い状態で取っておいたらしく派手な破損はありませんでしたが、工作ミスが散見される事、接着剤などの処理の甘さなどからおそらく当時小学3年〜5年生位だったのではないかと思います。
 これより低い年齢だと動力がきちんと作れません(そもそも説明書が理解できない)し、親が代理で作ったのなら表面処理がもっときちんとするだろうと思われる所からの推定です。



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 このセットに入っていた貨車はワムが2両(内1両は単3電池搭載の電源車w)、トが1両、タムが1両、トムフが1両と言う構成です。
 これは私の記憶のC10セットに入っていたものと全く同じです。普通、40年以上も放っておかれたモデルなら2,3両位は紛失していそうなものですがとりあえず全部揃っています。
 因みにこのセットの電池貨車はワム23000風ですが、私のC10セットではワム80000風になっていました。

 実際これだけでも大したものです。

 説明書によると車体はもとより車輪までオールプラですがウェイトだけは金属を奢っていたようです。
 とはいえ手に取ってみるとどれも実に軽いのでウェイトの意味が理解されずにプラのみで組み立てられた可能性もかなり高そうです。

 車体はややショーティ化されてますがプラレールよりもよほど模型らしい形状です。
 驚いた事にカプラーはアーノルド風のものが装備されていました。KATOがアーノルドを標準装備として規格化したのはこのモデルの出る2,3年前なのでかなりの先見の明と言えます。

 説明書によるとカプラーポケットに付属のばねを入れる指示までしており完全にNゲージの文法ですが、驚くべきはこのプラモが出たのが少なくとも1971年以前だったという事です。
 KATOが初めて2軸貨車を製品化したのはこの2年後の1973年頃。トミーナインスケールの登場は更にその後です。 貨車自体のラインナップもかなり重なっているのでナインスケールの二軸貨車の車種選択にこの製品が影響を与えている可能性もあります。

 少し興味を持ったのでナインスケールの貨車と並べてみました。



 何れも左側が童友社、右がナインスケールの仕様です。
 サイズがまるで違うので全く同じという訳ではありませんが、それでも車種のラインナップが酷似している事はお分かり頂けるかと思います。

 そう考えると本製品は文句なく「日本最古のNゲージ2軸貨車」と呼んで差し支えないのではないでしょうか。
 まあ、それを言い出したら自走するC58やC10もNゲージ最古なのですがw(KATOが初めてC11を出した前後の時期とほぼ重なるタイミングです)

 さて肝心のモデルのコンディションです、 

 よく見るとワムの1両は側板が上下逆だったりしますし、車体表面に接着剤がべたべた付いている辺りに小学生くささを感じるのですが。
 (とはいえ、当時はタミヤセメントみたいな液体式接着剤は普及していませんでしたし、大概の場合は箱に入っているチューブ式の粘っこい接着剤を使うのが定番でしたが)

 早速、貨車の方をN車両化するためにいくつか手を加えるレストア作業を進行中です。
 何しろ物が(おそらく)40年以上そのままだったモデルと思われる上に純粋なN車両とは異なる点もあるので全てが試行錯誤と言った所でしょうか。

 その中で特に困ったのがやはりカプラーでした。
 このモデルの場合、カプラーはアーノルドの規格に準拠している様ですがとはいえ、そこはプラモの悲しさ。
 「カプラーが上下逆(つまり向きも逆)に接着されている個体が多かった」のでこのままでは編成が組めないという弱点が(爆)
 とにかく、そのままでは普通のN車両とは連結できません。
 そこでカプラー部を一旦分解して組み直すプロセスが要求されます(笑)

 早速分解したのですが何分40年前に接着してそれっきりの状態ですからかなり骨が折れました。
 どうかすると分解中に車体までもが割れてしまい予定外の車体の再組み立てまでやる羽目になってしまった物まで出てしまいました。

 カプラーポケットの中には小さなばねが入っており前述のアーノルド風のカプラーを後ろから押しだして安定させる構造です。
 この辺は純粋なNゲージのレストアと全く違和感はありません。
 
 モデルには一部カプラー自体が無くなっている物がありそこは補充しなければならないのですが、おかげで手持ちの鉄コレ用パーツをそのまま使う事ができました。
 こんな所もこのモデルが完全なN規格に準拠している事を伺わせますし、だからこそこういう荒業も使えます。

 そして、車体の色はプラの地色そのままの茶色。
 これも昔私が作ったモデルそのままで懐かしいのですが、何分表面が昔の接着剤のはみ出しがそのままだった上に後から削りにくかったので上から判艶のラッカー系塗料で黒にリペイントしました。

 車輪も当初は鉄コレ辺りの物をあてがうつもりでしたが、軸受の幅が現行のNよりはるかに広い為にそのままでは入らない事が判明。
 良い方法が見つかるまで当面はそのままで行く事にします。

 因みに通常のNゲージのレールに乗せる事はできますがフランジが分厚いためにカーブでの抵抗は大きいため今のNゲージ貨車としての実用性はありませんでした。

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 レール関係です。


 このセットの大半の容積は線路関係のパーツで占められています。
 普通、車両込みの「鉄道模型のセット」に付いてくる線路と言うと単純なエンドレス一回りと言うのが普通です。
 まあ、少し複雑なもので退避線か側線用のポイントが一つか二つというところでしょう。

 ところが童友社のセットはそんなレベルをはるかに超える驚異のラインナップでした。

 基本のエンドレス用の直線とカーブ、それに平面交差用の90度クロスがあったというのは私も記憶していました。


 所が改めてこのセットを見ると側線用と退避線用にそれぞれ径が異なるポイントが左右1セット、つまり4つも付いているのです。


 それどころかクロスレールも上述の90度の他、45度と15度が一個づつ(!)
 更に踏切レールや車止めレールまであるという常識を超えた豪華な構成でした。

 一列車しか走らせない構成なので複線はさすがになかったようですが、それを差っ引いても「当時のKATOのカタログ1冊分のラインナップ」は確実に同梱されていると思います。
 正直、ここまで本格的なものとは思いもしませんでした。

 線路自体はオールプラながら道床も付いた本格的なものです。
 この1セットに含まれているレールだけでもTOMIXやユニトラック発足当時のレールのラインナップを凌ぐレベルでまず大概のトラックプランには対応できると言ってもいいものです。


 リレーラーも今売られている市販品で通用しますし

 車止めパーツはそのまんま無加工でTOMIXのレールに載せて使えるほどです。
 これだけのシステムが今から45年前にすでに確立していたのですから驚き以外の何物でもありません。

 これで通電してNのレールとして使えればよかったのですが(笑)

 ところでこのC58ですが改造してN化しています。詳しくは以下のリンクを
童友社のNサイズ「C58のようなもの」

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